Thursday, September 16, 2010

【雑感】 日本の税率は「大した悪党」レベル

【カイジ】

最近、「限定ジャンケン」や「鉄骨渡り」などのハラハラするギャンブルで有名な『カイジ』を読んでいる。
漫画好きを名乗る割に恥ずかしいのだが、こんなに有名な漫画であるにも関わらず、読むのは初めてのことである。
まあ名作と名高いだけのことはあり、非常に素晴らしい作品であり面白い。
カイジが受ける数々の不条理なゲームが世の中の不条理をそのまま反映していること、そんな世界の中でも自分で勝利のためのきっかけを作れる者のみが勝てること、金は命よりも重いこと、など大切なことを色々と読者に伝えてくれる。

ただし、上記のようなGeneralなカイジ解説は巷にも沢山溢れているので、それは他のサイトに譲って、今日はその作品の一場面を取り上げて、その暴利がいかに世の中一般的に行われていることかを解明したい。


【地下チンチロ】

今回僕が取り上げるのは、「地下チンチロ」からの一場面。
この場面というのは、多額の借金を抱えたカイジが遂にシャバの世界から地下強制労働施設に送られ、月90,000ペリカ(9,000円相当)の安月給で働かされるところ。

カイジはシャバの世界に戻る足がかりを得るため、一日外出券を得ようと金を貯める努力をするが、所属するE班の班長・大槻の巧みな篭絡(ビールと焼き鳥という食欲戦術)により金を使い果たす。
大槻はさらにカイジに給料を前貸しし、自身の主催する「地下チンチロ」に誘い込む。
この時、翌月の給料の前貸しということで、普段は月90,000ペリカの給料が、60,000ペリカにまで差っ引かれる。

結論からすると、この 食欲戦術 → 金に困る → 前貸し → 博打への誘導 は、大槻の常套戦術であり、ハメ技である。
大槻はその地下チンチロにおいて、非常に巧妙なイカサマを使うので、基本的には労働者は上記のBad Spiralに嵌った先の博打において大槻に敗北を喫する。
そこでその虎の子の前借り、60,000ペリカを使い果たしたものに対しては翌々月の給与を前貸しするのであるが、、、


と、何と90,000ペリカの半分の45,000ペリカをピンハネされてしまう。
それに対するカイジの反応はこちら。
当然の反応を示す。
この場面でカイジは初めて大槻による蟻地獄の様な絡め取り戦術に気づくという訳である。
この日のチンチロでは結局ボロ負けするカイジがその後頭を使い、根性を見せ、スカッとする程に大槻に大勝ち・リベンジする様は、当作品における一つのハイライトであり、非常に示唆に富むものがある。


【日本の税率】

この作品を読むほぼ全員が、大槻の暴利っぷりに程度の問題はあれど憤りの感情を覚えるはずである。
何せ、自分でそういう状況を作るように誘導しておきながら、給与の半分をピンハネするのである。
更にむかつくのは、カイジ以外の労働者のほとんどがその搾取構造に気付いていないか、もしくはその構造に諦めの感情を抱いているということである。

よく考えてみれば、日本人のおかれている状況は、上記の大槻構造にそっくりではないか。
何たって、日本の今の所得税は最高40%であり、地方税と合わせると10%である。
このカイジにおけるシステムと全く同じく給与の半分も税金として吸い上げられるのである。

カイジはこの構造を他の嵌められた労働者(45組、このシステムに気付いていないか、気付いていても諦めている人達)に説明する際に、
「そして・・・言っちゃなんだが・・・この滅茶苦茶な状況・・・システムがここでは合法・・・なんの問題もないんだ・・・・!結局この合法のなか班長たちは永遠に潤い続け・・・オレたちは・・・ただそれを支える役・・・!どうよ・・・?!満足か・・・?」
と説いている。
我々が置かれている立場はそれほどのものなのだという実感を皆さんは持っているのであろうか。

僕自身も社会人なり立ての頃に、今は無き某L証券にて年収一定以上で給与の半分が取られてしまうシステムを知り、物凄いやるせない気分になったのだが、その実感が最近は消えていた。


【そして】

確かに大槻構造と今の日本は状況が一部類似しているが、相違点もある。
それは「我々はカイジ達とは違い気に入らなければ場所を変えられる」ということ。
シンガポールや香港に行けばこんなアホらしい税金を取られることもなくなるのだと思うと、そのオプションがいかに魅力的か考えてしまう。
(それを自分自身が実行に移していないのは、今自分自身がまだ50%取られるほどの給与に至っていないからであり、実行するインセンティブが少々限定的であることが大きい。)

(自分を高所得者と言ってしまうのは変な話だが、)我々のようなある程度貰っている人たちが本当に国外逃亡をしていく世の中が現実になってくれば、日本にとっては貴重な税源の流出であり、痛手であることは間違いない。
そして最近はその流れが一部現実になってきているのも事実だと思う。(身の回りにも数人いる。)
これが大きな潮流になってくれば、さすがに日本も対応せざるを得なくなるのではないか。

いまや世界のどこにいてもある程度同じ環境下でビジネスが出来る世の中において、「愛国心」というものだけで高い税率を押し付けつつ、高額納税者を日本に居住させ続けられると本気で思っているのだとすれば、それこそ思い上がりもいいところだ。
日本にいることのメリット(「愛国心が満たされる」みたいな精神的インセンティブ+経済的インセンティブ)を日本は改めて国民に示さねばいけないフェーズに来ていると思う。

日本の早期における決意の一手を強く期待する次第である。

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